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自衛隊70年の現在地(3):日米同盟、変わる「矛と盾」 反撃能力で連携不可欠

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海上自衛隊の艦長クラスを中心とした自衛官約25人が3月下旬、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に集まった。令和7年度に予定する米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入に向け、米海軍第7艦隊から実地訓練を受けるためだ。

 

トマホークは、政府が4年末に策定した国家安全保障戦略など安保3文書で初めて保有をうたった。他国の領域内に攻撃を加える反撃能力(敵基地攻撃能力)の手段となる。昭和29年の創設以来、自衛隊は1千キロを超える長射程ミサイルを保有したことはなく、トマホークの運用は未知の領域だ。

 

5日間の訓練では、運用にあたっての部隊内の役割分担や通信ネットワークなどについて座学を実施。横須賀基地に停泊する米イージス駆逐艦マッキャンベルに乗艦し、戦闘指揮所で実際に戦闘で用いるボタンや操作卓を使って運用に必要な操作を習った。

 

「これから協力してやっていこう」。米軍の教官は真剣なまなざしを向ける自衛官たちに呼びかけた。

 

日本政府は昨年、反撃能力の整備を急ぐためトマホークの導入を当初予定から1年前倒しする方針を決めた。訓練に参加した海上幕僚監部防衛部の北原広太郎2等海佐(39)は引き締まった表情でこう語った。

 

「緊張感を持って、ネジを巻いて準備していかなければいけない」

 

反撃能力の保有に向け米駆逐艦内で、巡航ミサイル「トマホーク」の導入訓練をする自衛隊員ら=3月28日、神奈川県の米海軍横須賀基地(共同)

 

退任直前の安倍元首相の談話

 

日本政府が初めて敵基地攻撃能力の保有を検討する考えを示したのは、平成25年末に閣議決定した防衛計画の大綱(25大綱)だった。軍備を急拡大する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が背景にあった。

 

しかし、令和4年の安保3文書で保有を正式決定するまでに10年近くの時間を要した。

 

この間、政府は平成29年末に射程500~900キロの「スタンドオフ・ミサイル」の導入を決めた。だが、政府はあくまで日本の離島に上陸した敵などを攻撃するためのミサイルであり、敵基地攻撃能力ではないと説明してきた。

 

敵の領土の標的を効果的に攻撃するには攻撃目標の発見・識別・捕捉から攻撃の効果を確認する「キルチェーン」の構築が欠かせない。敵基地攻撃能力の保有を正式決定しなければ、キルチェーン構築に必要な人工衛星や敵のレーダーを無力化する装備を整備したり、米軍の協力を仰いだりすることはできなかった。

 

「やはりミサイルをミサイルで迎撃するなんて無理がある。打撃力を持たないといけない」

 

当時の安倍晋三首相は防衛省幹部にこう語り、令和2年9月の首相退任直前には敵基地攻撃能力の保有を検討する談話を発表し、4年末の決定に道筋を付けた。

 

米国製巡航ミサイル「トマホーク」の自衛隊への導入訓練が行われた米海軍ミサイル駆逐艦マッキャンベルで報道各社の取材に応じるエマニュエル駐日米大使(中央)=3月28日、神奈川県横須賀市(岡田美月撮影)

 

急がれる日米同盟の「現代化」

 

米国による日本防衛義務が明記された昭和35年発効の日米安全保障条約に基づく日米同盟は「米軍は矛・自衛隊は盾」という役割分担を基本としてきた。他国への攻撃を米軍に委ねてきた自衛隊が打撃力を持つことで、矛と盾の役割は変わりつつある。

 

ただ、自衛隊関係者は「ミサイルを持っても自衛隊には衛星などターゲッティングに必要な『目』が欠けている」と漏らす。攻撃判断は自衛隊が主体的に行うにしてもキルチェーンを独自に構築することは難しく、米軍との連携は必須となる。日米間での攻撃目標の調整も欠かせない。

 

それだけに今後は日米の指揮統制を含む作戦面での連携が一層重要となる。日本側が令和6年度末に陸海空自衛隊を一元指揮する統合作戦司令部を創設するのに合わせ、米側も在日米軍の機能強化を図り、部隊運用の連携を円滑化する。

 

自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は「経験豊かな同盟国の知見を吸収しながら万が一への対処に備えたい」と強調し、日米同盟の「現代化」を急ぐ考えだ。

 

筆者:小沢慶太(産経新聞)

 

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