【主張】国民の審判 首相の居座りは許されぬ 直ちに辞職し新総裁選出を
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衆院選で大敗を喫した石破茂首相(自民党総裁)が28日の記者会見で、引き続き政権を担う意欲を示した。
自身が設定した与党過半数という勝敗ラインを割り込む大敗の責任をとらずに、石破首相が政権に居座ろうとするのは信じがたいことだ。責任をとって潔く辞職すべきである。
自民は比較第一党に踏みとどまった。友党の公明党とともに政権構築を目指すのは分かるが、それは国民の信を失った石破総裁の下ではありえない。自民は速やかに総裁選を実施し、新総裁と新執行部が他党と交渉するのが望ましい。
本当に反省しているか
石破首相は会見で、衆院選の審判を「真摯(しんし)に厳粛に受け止める」と語った。だがその言葉とは裏腹に、「国政の停滞は許されない」と繰り返し、「安全保障、国民生活、災害対応に万事遺漏なきを期すことも私どもが負うべき責任だ」と述べた。
そこには反省が感じられない。国民は衆院選で石破首相に国政運営を託したくないという判断を示した。それがなぜ分からないのか。
有権者の審判を無視するトップが政権の座にとどまろうとして国民の支持を得られると思うなら甘すぎるし、民主主義から外れている。全ての自民国会議員は、石破首相の続投こそが、国政の停滞を招くと知るべきである。
自民の小泉進次郎選対委員長は28日、「選挙の結果責任は選対委員長が引き受ける」として辞任した。小泉氏は自身の進退について「目標を達成できなかったのに責任をとらない自民党では、不信感の方が大きいと思う」と語った。これは石破首相、森山裕幹事長にこそいえることである。
自民千葉県連会長の桜田義孝元五輪相は「議席をあれだけ減らした。責任はある」と述べ、首相や執行部の早期退陣を促した。これが国民感覚に沿った判断だろう。
石破首相は、第1次安倍晋三政権時の参院選で自民が大敗し「ねじれ国会」となった際に、続投を表明した安倍首相を攻撃した。党総務会で「(安倍)首相は『私か小沢一郎民主党代表かの選択だ』と訴えたのに、どう説明するのか」と非難した。代議士会では「首相は『反省すべきは反省する』といっているが、何を反省し、どう改めるのかはっきりしてほしい」と責め立てた。
同じことを石破首相に問いたい。28日の会見で「自民党は心底から反省し、生まれ変わらなければならない」と語ったが、トップである自身がまず責任をとるべきだろう。
麻生太郎政権時に農林水産相だった石破首相は、事実上の退陣を迫ったこともある。過去の言動との整合性がなければ、石破首相への信頼は集まらない。首相の言葉は限りなく軽いものとしてしか受け取られまい。
森山幹事長も責任重い
他人に厳しく自分に甘い、主権者である国民の審判を軽んじる。そこに謙虚さは見当たらない。このようなありさまで与党は特別国会の首相指名選挙に確実に勝てるのか。よしんば勝ったとしても、自民党内からは辞任論が出て、石破首相の求心力は低下している。安定した政権運営ができるのか。
森山幹事長の責任も重い。選挙戦最終盤には、自民が非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給したことが報じられ、「政治とカネ」を巡る批判に拍車をかけた。石破首相は「選挙に使うことはない」と述べたが説得力に乏しかった。支給を主導したのは森山氏だったとされる。
石破首相の就任後に、臨時国会で予算委員会を開かず早期に解散するよう進言したのも森山氏である。首相と森山氏は衆院選を有利に展開しようと党利党略に走ったが、思惑外れに終わった。
政府与党は首相指名選挙を行う特別国会を11月11日に召集する方向で調整している。だが、憲法第54条は衆院選投票日から30日以内の召集を定めている。ことさら引き延ばすことはあってはならないが、国会議員中心の自民総裁選を実施するくらいの日程的余裕はある。
自民は新総裁を選び、出直しを図らねば信頼回復は遠く、来年の参院選でも有権者から厳しい審判を受けるだろう。石破首相が今、日本と国民、党のためにできることは速やかに辞任することしかない。
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2024年10月29日付産経新聞【主張】を転載しています
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