責任とらぬ首相 石破氏で反転攻勢できるのか
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衆院選で自ら公言した「与党過半数」という勝敗ラインを下回っても責任をとらない石破茂首相(自民党総裁)や森山裕幹事長には、廉恥心も、民意を重んじる心も感じられない。
辞任して新総裁が特別国会での首相指名選挙に向け他党と交渉するのが筋だが、石破首相は居座りを決め込む。少数与党政権を発足させたいのだろう。
共同通信社の10月28、29両日の世論調査で、石破内閣の支持率は32・1%、不支持率は52・2%と早くも危機的水準になった。石破首相の辞任を求めたのは28・6%で辞任不要は65・7%と、石破首相がすがりつきたくなるような数字も出た。
一見矛盾する結果だが、自民と公明党の連立を弱体化させるには石破首相続投がよいとみなす野党支持者が辞任不要の回答者に含まれるのかもしれず、自民は油断しない方がよい。
与党は目先の政権維持に加え、過半数をできるだけ早期に回復して安定政権を取り戻すことが課題となる。それには他党の連立入りか、衆院解散総選挙で勝利することが必要だ。その仕事に最も相応(ふさわ)しくない自民議員は石破首相だろう。「言い訳選挙」に終始した政治の流れを変える力量も乏しく、待ち受けるのは国会での野党の大攻勢と自民内の動揺、抗争である。
就任後の掌(てのひら)返しや言行不一致に加え、衆院選の審判を無視した石破首相の声は国民の心に届かないため反転攻勢のきっかけは摑(つか)めまい。来夏の参院選を意識する野党の猛批判に石破政権は防戦一方になるに違いない。
石破首相が、国民民主党との政策ごとの部分連合に期待しても、首相指名選挙での中立はともかく、協力深化は難題だ。国民民主も参院選で勝ちたいと思っているからだ。部分連合による看板政策実現の成果は誇りたいだろうが、さりとて世間から石破政権の補完勢力とみなされては本末転倒になる。物分かりのいい顔ばかりは示すまい。
石破首相が参院選でも大敗して退陣するのでは遅すぎる。
今後予想される与野党の対立は民主主義の付属物だから否定しないが外交安全保障は疎(おろそ)かにしてほしくない。
20歳代の若手記者だった筆者は平成6年に少数与党の羽田孜政権をめぐる政局を取材した。64日間の短命政権だったが政治家も筆者を含む記者も朝鮮半島核危機そっちのけで大騒ぎしていた。これを現代日本が繰り返せば大変なことになる。
筆者:榊原智(産経新聞論説委員長)
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2024年11月2日付産経新聞【風を読む】を転載しています
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