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中国系IT企業の潜在的脅威

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トランプ米大統領は14日、中国IT企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し、同社が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を90日以内に売却するよう命じた。米国の大統領は、安全保障の観点で対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告に基づき、企業の合併・買収(M&A)の阻止や事業売却を命じる権限を持っており、今回の命令はこの権限に基づく正式な要求である。現在、米マイクロソフト社が買収に名乗りを上げている。一連の動きはティックトックで収集された個人情報が中国政府に流出する恐れが出ているためで、安全保障上の懸念が背景にあるとされる。

 

無断で利用者情報を集めるTikTok

 

我が国では動画投稿サイト「ユーチューブ」が普及している。昨年9月には、原子力発電所事故が起きた福島県をはじめ5県産の食品の輸入を今も禁止している台湾から学生達が来日し、福島県で水揚げされたヒラメを放射線計測器で測り、ヒラメの体内の放射線量が検出限界以下まで低下していることをユーチューブで台湾に配信した。

 

これと同じことがティックトックでもできる。日本の2018年のダウンロード数ランキングで、ティックトックが対話アプリ「LINE(ライン)」や地図サービス「グーグルマップ」などの代表的なアプリを抑え、1位となった。

 

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米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は11日、ティックトックが米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」搭載のスマートフォンの識別番号(MACアドレス)を収集し、利用者の情報を追跡できるようにしていたと報じた。利用者に無断で収集していたとみられ、グーグルの規約に違反した可能性があるとしている。識別番号は例えれば、IT機器の「マイナンバー」である。ティックトックは昨年11月、識別番号の収集を停止した。それでもポンペオ米国務長官は「ティックトックを利用すれば、個人情報が中国政府に渡りかねない」と警告している。

 

 

Zoomの便利さの裏にリスク

 

コロナウイルス対策で急速に普及したビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」は、中国生まれで米国籍を取得したエリック・ユエン氏が起業した米国企業によって開発された。しかし、1989年に中国の民主化運動が武力鎮圧された天安門事件に関するズーム利用のビデオ会議が遮断され、主催者3名のアカウントが停止された。ズーム社は中国政府からの圧力によるものだったことを認めた。

 

ズームの開発拠点は中国にもあり、情報を配信するサーバーの一部は中国に設置されている。そのため、ズームを利用した会議は簡単に傍受される脆弱性が指摘された。ズーム社はセキュリティー上の問題点を速やかに改善したと説明するものの、高精細な図を使ったビデオ会議などが中国に傍受されれば、企業機密も筒抜けになってしまう。

 

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我が国も情報セキュリティーの強化や世界をリードするITソフトの開発にもっと力を入れるべきである。世界は米中の情報戦の真っただ中にある。

 

筆者:奈良林直(国基研理事・北海道大学名誉教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第711回・特別版(2020年8月17日)を転載しています

 

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