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【主張】日本の科学力 安全保障の観点で再建を

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新型コロナウイルスのワクチン開発において、日本は世界のトップグループのスピードについていけなかった。

 

行政と医療機関、国民の間で必要な情報交換や手続きでは、デジタル化における後進性が露(あら)わになった。

 

コロナ禍で炙(あぶ)り出された日本の現状である。

 

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科学技術に関して「日本は先進国である」という思い込みは、捨てなければならない。

 

このままでいいはずはない。

 

産官学と国民が総力を結集して日本の科学技術の立て直しを図る必要がある。

 

日本の科学力の危機的な低落傾向は、平成20年前後から繰り返し指摘されてきた。多くのノーベル賞受賞者や英科学誌は、研究開発への投資額の少なさ、短期的成果偏重の弊害、若手研究者の不安定な身分-などの要因を挙げた。

 

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政府は令和2年度から若手研究者支援策を始めたが、科学力のV字回復を実現するためには、経済界や国民を幅広く巻き込んで、日本社会の科学力を向上させる必要がある。

 

ワクチン開発やデジタル化での遅れが、大学や研究機関の科学力が原因だったとは考えにくい。研究室の段階では必要な知識、技術はあるはずなのに、製品開発や社会普及の段階で世界のトップグループからは大きく遅れた。その原因は社会の科学力にある、と認識すべきである。

 

新型コロナのような未知の感染症に対しては、公衆衛生ではなく安全保障上の脅威ととらえ、平時から備える必要がある。海外との連携は重要だが、ワクチンや治療薬開発に即応できる体制は国内に構築しなければならない。ワクチン承認などの手続きは平時とは異なる迅速さが求められる。また、医療や製薬で不可欠な治験で十分なデータを早く得るためには、国民の理解と協力が大切だ。

 

政治と経済が連動し、国民を巻き込まなければ社会の科学力を高めることはできない。

 

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資源の乏しい日本にとって、科学技術は生命線である。国際社会から必要とされ、尊敬される国であるために、科学技術で人類に貢献していかなければならない。

 

政府も企業も国民も、科学技術を経済成長の道具ととらえてきたのではないか。安全保障の観点で「日本の科学力」の立て直しを図らなければならない。

 

 

2021年5月4日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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