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宇宙で日本発の水再生技術 尿から98%の純水

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宇宙飛行士の星出(ほしで)彰彦さん(52)の国際宇宙ステーション(ISS)での約半年間の滞在が始まった。期間中に与えられた多くのミッション(任務)のうち、特に注目されるのは、日本実験棟「きぼう」で、宇宙で貴重な水を再生するシステムの実証実験だ。水再生技術は日本の得意分野。今回の実験を経て、高い再生率のシステムが実用化されれば、人類が宇宙で暮らしたり、長期滞在したりするための「生活インフラ」として大いに貢献しそうだ。

 

 

再生率90%以上 メンテナンス不要

 

水再生システム装置は、高度約400キロのISSで生活する宇宙飛行士の尿を飲料水として再生する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が民間企業と協力して開発した。日本独自の水処理技術を用いた次世代型で、一昨年11月に実証実験機が打ち上げられた。

 

システムの処理工程は大きく分けて3つの段階からなる。

 

尿から純水を再生するためには、尿中に含まれるマグネシウムやカルシウムなどの不純物を取り除く必要がある。最初に行う「イオン交換」という処理でこれらを除去した後、250度の高温と、地表面付近の大気圧の約70倍となる高圧をかけて電気を通し、有機成分を分解。最後に電気透析を行って残ったイオンを除去し、飲用可能なレベルにまで浄化する。

 

ISSでは現在、米航空宇宙局(NASA)の水再生処理装置が導入されており、尿や除湿によって回収した水を浄化処理して飲料水として利用している。ただ、消耗品の交換などメンテナンスが必要なうえ、水の再生率は80%にとどまっており、不足分は地上からの輸送で補っている。

 

日本が開発した新型の実証機は高さ48センチ、幅53・5センチ、奥行き60センチ。最終的に、現行装置の半分の大きさで、消費電力は30%減、再生率は92%以上に向上させる。さらに、電気透析で副産物として生成するアルカリ水と酸性水を利用し、イオン交換樹脂を自動再生する技術を導入。消耗品の交換が不要な自己完結型となっている。

 

一方、無重力の宇宙では処理工程で発生する気泡が水面まで浮かずに液体中にとどまってしまう。今回の実証実験では、こうした気泡が装置の処理性能にどのような影響を与えるのかを調べる。

 

将来的には再生率98%を目指す予定で、きぼうでの実験計画を統括するJAXA有人宇宙技術センターの山本紘史(ひろし)主任研究開発員は「ポストISS有人ミッションの実現や国際有人宇宙探査ミッションでの基幹部分として、日本の貢献につなげることが期待できる」と話す。

 

また、今回の実験結果を踏まえ、水資源の限られる干魃(かんばつ)地帯や被災地などでの応用も考えられるという。

 

 

地上と似た過ごしやすい環境のために

 

ISSは将来的に「宇宙ホテル」などの商業活用が計画されており、米人気俳優のトム・クルーズさんが新作映画の撮影を行う構想がある。今月13日には、衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)創業者の前沢友作氏が、今年12月に日本人の民間人宇宙飛行士として初めてISSに約12日間滞在すると発表した。宇宙旅行をめぐっては、米スペースX社が民間人4人だけを乗せた新型宇宙船を今秋までに打ち上げる計画もあり、民間人が宇宙滞在する時代は目前に迫る。

 

NASAはアポロ計画以来となる宇宙飛行士の月面着陸を数年内に目指す国際プロジェクト「アルテミス計画」を推進。月上空を回る宇宙基地「ゲートウェイ」を完成させた後、ここを中継拠点として月や火星への有人探査を行う構想だ。

 

今回の星出さんのミッションには、長期間の宇宙滞在で懸念される筋萎縮の予防を念頭に、抗筋萎縮物質(バイオ素材)を使った実験のほか、宇宙火災を想定し、無重力下での物質の燃え方を調べる実験などがある。実用化されれば、いずれも宇宙旅行や月、火星探査のための長期滞在などに役立つ技術が多い。

 

日本発の高性能な水再生システムの実用化も、こうした宇宙での長期的な生活を実現するための生活インフラだ。JAXAの的川泰宣名誉教授は「地上と似た過ごしやすい環境をつくるためには水は最も大事な資源。多くの人類が宇宙で暮らす新しい時代を支える非常に大事な技術になる」と話している。

 

筆者:有年由貴子(産経新聞)

 

 

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