【主張】天安門事件32年 二重の国家犯罪を許すな
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中国の民主化を求める学生ら無辜(むこ)の民を、人民解放軍が無差別に殺傷した天安門事件から4日で32年となる。習近平政権は中国本土や香港で事件の真相究明を求める声を封殺する構えだ。7月に中国共産党の創建100年を迎える今年は弾圧が強まる恐れがある。
1989年6月3日夜から4日未明にかけて、いったい何人の犠牲者が出たのか。当時、中国政府は死者「319人」と発表したが、数千人から1万人規模との見方がある。戦車が学生らをひき殺し、兵士が無差別発砲を繰り返したことは多くの市民が目撃している。真相究明を求める声が絶えないのは当然だ。
犠牲者を追悼するとともに忘れてならないのは、天安門事件は過去の悲劇にとどまらない、という点だ。
中国共産党が犯した罪は一般市民の無差別殺傷だけではない。同党の権力の及ぶところでは、天安門事件はなかったことにされてきた。真相究明の動きを封じようと遺族や民主活動家らを拘束するなど、人権侵害は今も続いている。事件時と事件後の、いわば二重の国家犯罪といえる。許されるものではない。
香港では4日に追悼集会が予定されていたが、昨年同様、香港警察によって禁止された。天安門事件の資料を展示する香港の「六四記念館」も香港当局によって一時閉館に追い込まれた。
隣国である民主主義の日本が黙っていていいわけがない。
日本が想起すべきは天安門事件後の対中外交失敗の教訓だ。事件をめぐって日本政府が「長期的、大局的観点から得策でない」などと、欧米諸国との対中共同制裁に反対する方針を明記した文書を作っていたことが、昨年の外交文書公開で明らかになった。人権軽視の姿勢は恥ずかしい。
その後も日本政府は、天安門事件を反省しない中国が国際社会に復帰することを手助けした。
バイデン米政権は、米中対立を「21世紀における民主主義と専制主義の戦い」と位置付け、人権重視の外交姿勢を示している。欧米諸国はウイグル人弾圧をめぐって対中制裁に乗り出したが、日本政府は加わらなかった。
これではいけない。菅義偉政権や国会は天安門事件の真相究明とともに、現代中国の人権弾圧を阻む行動に乗り出すべきだ。
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2021年6月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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