近く感じた韓国、今は遠く
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エスニックジョークは国民性、民族性の違いを笑いのネタにしている。例えば、レストランで注文したスープにハエが入っていたら…。
イギリス人はスプーンを置き、皮肉を言って店を出ていく。アメリカ人は訴訟を起こす。ロシア人は酔っぱらっていて気がつかない。日本人は他の人のスープには入っていないのを確認してからウエーターを呼ぶ。
そして韓国人は、ハエが入っているのは日本人のせいだと叫んで、日の丸を燃やす。
TOKYO五輪での韓国の振る舞いも、このジョークのようだが、とても笑えない。
組織委員会の公式ホームページの日本地図にある竹島(韓国名・独島)を「削除しなければオリンピックのボイコットも辞さない」。結局、参加したが、選手村に「抗日の英雄」にちなんだメッセージの横断幕を掲げ、国際オリンピック委員会(ⅠOC)から五輪憲章に触れると指摘されて撤去した。
東日本大震災で原発事故が起きた福島県産の食材は口にしたくないと、選手に独自の弁当を用意している。安全性が科学的に証明されているのに、わざわざ風評被害をまき散らす。韓国メディアは、メダリストに贈られるブーケに福島の花が使われているとクレームをつけた。
お断りしておくが、以前から韓国嫌いだったわけではない。1988年のソウル五輪を現地で取材したが、日本が東京五輪で戦後の復興を世界に示したように、朝鮮戦争での民族分断の悲劇と焦土から立ち上がり、近代都市に生まれ変わった躍進ぶりに瞠目(どうもく)した。
あの頃の韓国の国民感情は「反日」ではなく「克日」だったと思う。事前企画で「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれた経済成長を取り上げた。インタビューした財閥系の商社の幹部は「日本をお手本にしてきたが、いずれ追いつき、追い越しますよ」と胸を張った。
ソウルの街角の屋台で飲んでいると、年配の男性が日本語で話しかけてきた。からまれるのかと身構えたら、五輪の前年に行われた大統領選を話題に民主化した韓国を自慢して、一杯おごってくれた。
五輪の記者村は警備が厳重だったが、出入り口の女性警備員がいつも日本語で「おはよう」「こんにちは」と声をかけてくれた。通訳など取材のアシスタントをしてくれた学生も親日的だった。
その後、日本ではテレビドラマ「冬のソナタ」で韓流ブームが起き、若者はK―POPのアイドルグループに夢中になり、われわれおじさんは辛旨の韓国グルメと焼酎にはまった。
隣国が文字通り近くに感じられた時期もあったのに、今は遠い。原因がどちらにあるかは言うまでもない。
筆者:鹿間孝一(産経新聞)
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2021年7月30日付産経ニュース【ボクらの祝祭】を転載しています
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