露、日本の「戦争犯罪」喧伝 歴史戦で攻勢

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ロシアのプーチン政権が第二次世界大戦中の日本の「戦争犯罪」を喧伝(けんでん)する動きを強めている。6~7日には極東ハバロフスクで、旧ソ連が抑留中の日本軍人を一方的に訴追した「ハバロフスク裁判」(1949年12月)に関する学術会議を開き、「ソ連は(日本による)細菌戦から世界を救った」などとする認識を示した。日本を「悪者」とする歴史観を広め、日ソ中立条約を破って対日参戦したソ連の行動を正当化する狙いがある。

 

ハバロフスク裁判では細菌兵器の研究を行ったとされる「七三一部隊」(関東軍防疫給水部)の関係者ら12人が「戦犯」として強制労働の判決を下された。日本軍人らの長期抑留自体が国際法(ジュネーブ条約)やポツダム宣言に違反するものだった上、取り調べや審理の内実も西側とは大きくかけ離れたものだった。

 

同裁判をテーマとした6~7日の学術会議は、露歴史協会や連邦保安局(FSB)、外務省などが共催。プーチン大統領は「第二次大戦に関する歪曲を防ぎ、(大戦の)再発を防ぐ上で歴史を保存することが重要だ」と開会のメッセージを寄せた。ラブロフ外相はビデオ演説で「ロシアは世界的に承認された第二次大戦の結果が修正されるのを阻止する」と述べた。

 

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露連邦捜査委員会のフョードロフ副長官は会議の中で「日本の研究が米国の生物兵器開発の基礎になった」と主張。副長官は日本による「捕虜殺害事件」を新たに捜査し、犯人を公表する方針も打ち出した。

 

FSBは会議に先立つ8月、関東軍将兵の「証言」だとする文書の機密を相次いで解除し、国営通信社が大きく報じた。「日本は38年から対ソ戦を準備していた」「日本はソ連国民に生体実験をした」などとする内容だ。

 

ソ連は41年の日ソ中立条約を破って45年8月に対日参戦し、北方領土を不法占拠した。プーチン政権は「ソ連=善」「日本=悪」とする歴史観を定着させ、大戦期のソ連の不法行為をかき消す思惑だ。北方領土が「第二次大戦の結果としてロシア領になった」とするプーチン政権の主張と表裏一体の情報戦といえる。

 

ロシアは欧州諸国に対しても歴史をめぐる宣伝に躍起だ。欧州議会が2019年9月、大戦勃発80年にあたってナチス・ドイツとソ連を批判した決議にプーチン氏は猛反発。プーチン氏は「ソ連はナチスから欧州を解放した」などとする反論文を欧米誌に寄稿した。

 

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露国内でも昨年の憲法改正で「歴史の真実を守る」との条項が設けられた。今年7月には出版物やインターネットへの投稿などを対象に、ナチスとソ連を同列視することを禁じる法律も施行された。

 

筆者:小野田雄一(産経新聞モスクワ支局)

 

 

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