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安倍晋三元首相インタビュー「防衛に努めぬ国と共に戦う国はない」

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自民党の安倍晋三元首相は25日、産経新聞の単独インタビューに応じ、ロシアによるウクライナ侵攻について、「日本にとって決してひとごとではない」と述べ、今回の事態から日本が学ぶべき「教訓」として集団的自衛権の重要性を指摘した。「ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だったらロシアに侵略されることはなかった。同盟国以外はともに戦う国は存在しない」と強調した。

 

さらに、ロシアの侵攻にウクライナが徹底抗戦している現状や、ドイツが露軍のウクライナ侵攻後に国防費を大幅に増額したことを踏まえ「自分の国は自国の努力で守ることが基本だ」と述べた上で、敵の基地を攻撃する「打撃力」を自前で持つ必要があると訴えた。先の衆院選で自民党が公約に掲げた防衛費の「国内総生産(GDP)比2%以上」の増額幅は「当然だ」と語り、「国の防衛に努力しない国のために一緒に戦う国はない」とも述べた。

 

北朝鮮が24日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受け、日本に対して北朝鮮に核を使用させないための「核の抑止力」についても議論すべきだと提起した。

 

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インタビューの詳細は以下の通り。

 

 

ロシアのプーチン大統領と安倍首相(当時)=2018年

 

交渉中断は露に責任

 

ウクライナのゼレンスキー大統領とは首相在任中の2019(令和元)年10月、天皇陛下が即位を内外に宣明される「即位礼正殿の儀」の機会に会談しました。最初は少し緊張していた印象でしたが、会談が始まるとすぐに打ち解けた雰囲気になりました。今月23日のゼレンスキー氏の国会でのオンライン演説は、他国での演説よりも抑えたトーンだった印象です。

 

ロシアのプーチン大統領は力の信奉者で、武力行使もいとわない。米国と旧ソ連の対立という戦後の冷戦構造が崩れる中、北大西洋条約機構(NATO)の拡大がウクライナにまで及ぶことは許容できないと考えたのでしょう。ただ、私は彼が理念型ではなく、現実主義者であるとも考えていたので今回、親ロシア派が実効支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(ともに自称)の東部2地域だけでなく全面的に戦端を開いたのは驚きでした。

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ロシアが21日、日本との平和条約締結交渉の中断を発表しましたが、ロシアのウクライナへの侵攻で、そもそもロシアと交渉できる環境にはなくなった。責任は日本ではなく、ロシアにあります。アジアでウクライナと同様のことが起こらないようにするためにも対露制裁で先進7カ国(G7)と足並みをそろえるのは当然で、岸田文雄首相はリーダーシップを発揮していると思います。

 

一方で、日本の隣国であるロシアは強大な軍事大国でもある。北方領土問題を解決し、(北方四島の)元島民の悲願でもある平和条約を締結する政府の方針はこれからも変わることはないでしょう。

 

ロシアによるウクライナ侵攻は、日本にとって決してひとごとではありません。ウクライナと台湾、それぞれを取り巻く情勢を比べると、ロシアはウクライナに対し政治的、経済的に強い影響力があり、ウクライナ国内のロシア系住民に対し「ロシアが安全を確保する」との意思を表明してきた。

 

一方、中国は台湾が中国の一部であり、台湾を将来統一すると表明している。台湾には(中国)大陸系の住民もいる。また、ウクライナと台湾はそれぞれ同盟国が存在せず、(対立する)当事国が国連安全保障理事会の常任理事国である点も共通しています。

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中国の習近平国家主席からみれば大きく異なる点もあります。ウクライナは国連の加盟国で、国家として国際社会で認められていますが、台湾については中国は「国内問題」だと主張し、実際に国際社会で台湾を国家として認めている国は非常に少ない。習氏はウクライナ情勢の推移を注視しているでしょう。

 

 

核共有タブー視せず

 

ロシアのウクライナ侵攻から日本は学び取るべき教訓があります。国連安保理の常任理事国が紛争の当事国になれば安保理が機能しないこと。そして、同盟国以外はともに戦う国は存在しないという点です。安倍晋三政権時に成立した集団的自衛権の限定行使容認を含む安全保障関連法は「戦争に巻き込まれる」などと批判されましたが、今のウクライナの現実は、真実がその逆であることを示しています。

 

ウクライナがNATOの加盟国だったならばロシアに侵略されることはなかった。まさに世界がどのように守られているのかという現実です。今、ドイツなど欧州各国は防衛力強化を次々と決めている。自分の国は自国の努力で守ることが基本なのです。

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核保有国が同盟国と核兵器を共有して抑止力を高める「核共有(ニュークリア・シェアリング)」に私が言及したのは、国際社会の現実をタブー視することなく議論すべきだという考えからです。

 

ウクライナは1994年の「ブダペスト覚書」で、米英露からの自国の安全保障と引き換えに、旧ソ連軍時代からの全核兵器をロシアに引き渡した。その際にいくつかの「戦術核」を残していたら事態は変わっていたかもしれません。そして、今の日本は日米同盟に基づいて日本の周辺国に対し抑止力を持つ「核の拡大抑止」の中にありますが、この機能の確実性をどう確保するかを考えることも大切です。

 

 

核使わせぬ抑止力議論を

 

北朝鮮が24日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したのも、かつてリビアのカダフィ政権が米英の要求に応じて核開発計画を放棄した結果、崩壊したことを踏まえ、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は「リビアが核を保有していれば違った運命があった」と考えているかもしれない。北朝鮮に日本への核を使用させないための抑止力についても議論すべきです。

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(敵の基地を攻撃する)打撃力をわれわれが保持することも必要です。抑止力には弾道ミサイルなど相手の攻撃を物理的に阻止する十分な能力を示す「拒否的抑止」と、侵略者に攻撃をためらわせる「懲罰的・報復的抑止」がありますが、今は米国だけが持つ「懲罰的・報復的抑止」の一部を日本も担わなければならない。この抑止力が日本になければ防衛力の欠陥です。

 

自民党は先の衆院選の公約で防衛費について「国内総生産(GDP)比2%以上も念頭」と明記しましたが当然でしょう。自国の防衛に努力しない国のために一緒に戦う国はありません。

 

現在、衆参両院の憲法審査会で憲法改正議論が進んでいることは非常に喜ばしいことです。ウクライナの事態を受け、自民党の改憲4項目(9条への自衛隊明記、緊急事態対応、参院「合区」解消、教育の充実)の中でも9条についてしっかり議論するいい機会です。

 

また、政府はウクライナに自衛隊の防衛装備品を提供するために輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定しましたが、国内の防衛産業を維持するためにも、防衛装備品の輸出に向けて指針の見直しを検討する必要があると思います。

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聞き手:小川真由美(産経新聞)

 

 

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