【主張】プラ新法施行 レジ袋の次は歯ブラシか
上高地帝国ホテルの館内で提供する竹製や木製、
生分解性プラスチック素材の歯ブラシやヘアブラシ、カミソリ
(帝国ホテル提供)
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石油を原料とするプラスチックの使用量を減らすとともに、その再資源化を進めてプラごみの削減を目指す「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」が4月から施行された。
プラスチック製品は安価で丈夫で使いやすいため、この半世紀にわたって多様な分野で大量に用いられてきた。
プラスチックは炭素を含む有機物だが、人工物なので分解菌の歯が立たず、自然界に流出したものは半永久的に残り続ける。
海を漂うプラごみは紫外線と波の作用でマイクロプラスチックと呼ばれる小片になり、誤食などで魚介類の体内にたまる。海の生態系への負の影響が世界的に憂慮されているところである。
プラごみ削減策では、レジ袋の有料化が先行しているが、新年度からのプラ新法では、日常生活での使い捨て製品のさらなる削減を目指して12品目の「特定プラスチック使用製品」が指定された。
飲食店で料理と一緒に提供されるスプーンやフォーク類、宿泊施設でサービスされる歯ブラシやシャワーキャップなどの他、クリーニング店でのハンガーなどだ。
年5トン以上を提供する飲食店などの事業者側には有料化や代替素材への変更といった形での削減目標の設定義務が課せられる。
消費者の暮らしではプラごみの出し方が変わる。例えば、これまで食品トレーや菓子袋などを家庭からのプラごみとして出すルールになっていた自治体では、その他のプラ製品も一緒に出せるようになることなどの変更だ。
4月には転居者も多い。混乱を防ぐためにも国や自治体からのプラ新法についての分かりやすい情報提供が欠かせない。
新法は使い捨て文化の見直しも視野に入れていると思われる。理念は高いが、その一方で手つかずの大きな課題が残されている。
世界の海洋は地球のごみ箱になりつつある。その抑止がプラ新法の究極の目標であるはずだ。
海において量と害で最も深刻なプラごみは廃棄や流失の道をたどった漁網などの漁具類である。レジ袋の順位は低いのだ。
環境改善では海の粗大プラごみの解決が急務だろう。生活者の負担感が増すだけとなりかねない小技尽くしの対策で政府が自足するようなら、プラ新法の意義と効果が薄れてしまう。
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2022年3月31日付産経新聞【主張】を転載しています
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