【主張】対露追加制裁 虐殺者に代償を払わせよ
4月6日、ウクライナの首都キーウ近郊のブチャに残る、
破壊されたロシア軍の戦車(AP)
~~
ロシア軍によるウクライナ市民虐殺の惨状が連日、伝えられている。
ブリンケン米国務長官は「ロシア軍が(ウクライナ市民を)レイプ、殺害、拷問したとの確かな報告がますます増えている」と語った。
侵略だけでも許されないのに、ロシアは人道に反する戦争犯罪を重ねている。国連総会は国連人権理事会からのロシア追放を決議した。
先進7カ国(G7)やオーストラリアなどは対露追加制裁を打ち出した。侵略者、虐殺者に代償を払わせ、戦費に回す資金を枯渇させなくてはならない。
岸田文雄首相は8日に記者会見し、ロシア軍によるウクライナ市民殺害を「断じて許されない戦争犯罪だ」と非難した。「ロシアに対する外交的、経済的圧力を強化する」と述べ、ロシア産石炭の輸入禁止、対露新規投資の禁止、資産凍結対象の拡大などの追加制裁を表明したのは妥当だ。
外務省は駐日ロシア大使館の外交官ら8人の国外追放を発表した。必要なら、さらなる追放をためらうべきではない。
ウクライナ侵略と対露制裁によって日本でも物価高騰が起きている。岸田首相は対策を講じるとした上で、「非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場だ」と述べ、国民に理解と協力を求めた。抗戦するウクライナに寄り添うため、対露制裁への協力は重要だ。
日本を含めG7は今回、ロシア産の石油と天然ガスの輸入制限に踏み込まなかった。ロシア産ガスへの依存率が高いドイツなどに配慮した事情がある。
岸田首相はG7の首脳声明に沿って、「石油を含むエネルギー全体のロシア依存低減に踏み込む」と述べた。だが、石油や天然ガスの具体的な対露依存低減の方策は語らなかった。
ドイツほどの依存度ではない日本にはできることがある。原油採掘の「サハリン1」、天然ガス開発の「サハリン2」からのエネルギー輸入停止である。少なくとも、輸入を速やかに減らす計画を立て実行してもらいたい。
ベルギーでの北大西洋条約機構(NATO)外相会合は、ウクライナへの軍事支援強化で合意した。武器援助をしないなら、日本は他の手段で力を尽くすべきだ。中国にロシアを一切支援しないよう求め続けなければならない。
◇
2022年4月9日付産経新聞【主張】を転載しています
You must be logged in to post a comment Login