20220324 Rahm Emanuel and Kishida in Hiroshima 003

US Ambassador Rahm Emanuel, accompanied by Japan's Prime Minister Fumio Kishida, lays a wreath at Hiroshima Peace Memorial Park, on Saturday, March 26, 2022.

広島市を訪問し、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花する
エマニュエル駐日米大使。右端は岸田首相
=3月26日午後

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‘Plague of Imperialism’: Questioning the Omission of Hiroshima-Nagasaki Atomic Bombings in Tokyo Trial Ruling

 

(「帝国主義の疫病」:東京裁判で扱われなかった広島、長崎への原爆投下を問う)

 

 

今年も「終戦の日」がやってきた。日本が戦争終結を宣言した8月15日から77年がたった。だが、今年はその意味はこれまでになく重い。日本の平和への願いとは裏腹に、ロシアが2月に開始したウクライナ侵略は長期化し、中国は今月、弾道ミサイル発射を含む大規模な軍事演習で台湾や米国、日本に恫喝(どうかつ)のギアをあげているからだ。

 

核保有国のロシアと中国は、国連安全保障理事会常任理事国(P5)である。世界の平和と安定を担保すべき立場にあるのに、逆に平和を破壊する行動に出ている。ロシアに至っては、核による威嚇という“禁じ手”に及んで、世界に衝撃を与えた。

 

これから世界はどうなるのか-。英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」(JF)は、世界が対立と紛争の時代に向かう中、平和を希求する日本の議論や視点を的確に世界に伝えていくことが何より重要だと考える。安全保障にかかわる記事の発信がJFで最近特に多くなっていることにも、それは表れている。

 

唯一の被爆国、日本の岸田文雄首相が、米ニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議に日本の首相として初めて出席し、「核兵器のない世界」の実現に向けて核保有国に具体的な行動を求める演説を行った。

 

JFはその演説内容を詳報する一方で、「核軍縮だけでは国民を守ることはできない」とする本紙の主張記事も掲載。世界で軍事衝突の危険が高まる現実に、核抑止力の重要性を強調した。このほかにも、軍事力の裏付けがない空想的な平和主義は逆に新たな大戦を招く危険を高めると警鐘を鳴らす記事も掲載した。

 

Justice Radhabinod Pal in his office. From the collection of fellow Tokyo Trials Justice Bert Röling, in the National Archives of The Netherlands. (Public record, via Wikimedia Commons.)

 

ちなみに、7月末から8月第1週の2週間にJFで最も読まれたのが、上の英文見出しの記事だった。記事は、大戦後行われた極東国際軍事裁判(東京裁判)で判事を務めたインドのラダビノード・パール判事(1886~1967年)について掲載した連載記事(全6話)の第4話だ。日本国際問題研究所シニアフェローのモニカ・チャンソリア博士が寄稿した。

 

パール判事は東京裁判で判事全員一致の有罪判決を目指す動きに反対し、「意見書」(通称「パール判決書」)を提出。その中で、平和に対する罪と人道に対する罪は戦勝国により作られた事後法であり、事後法で裁くことは国際法に反するとし、被告人全員の無罪を主張した。

 

記事では、東京裁判が広島、長崎への原爆投下について扱わなかったことに、パール判事が特に悩んでいたと指摘。判事は、原爆投下国が人道に対する罪で投下された国を裁くことはできないと訴えていた。

 

東京裁判は欧米諸国の植民地主義と米国による原爆投下を犯罪のリストから外し、敗戦国の判事を法廷から除外した。パール判事はそんな東京裁判を「戦勝国が敗戦国に報復をする場以外の何物でもない」と考えていたという。

 

それから70年余り。別な形の植民地・帝国主義が頭をもたげている。先の戦勝国ロシア(旧ソ連)はウクライナを、中国は台湾を、それぞれの不可分な新植民地にすべく動き出している。中露両国に共通するのは領土拡張欲と欧米に対する劣等感、そして、その感情の裏返しとでもいうべき強烈な反米感情である。

 

中露の新植民地主義は、まさに世界を破滅に導く恐ろしい疫病だ。JFは「終戦の日」に、敗戦国の日本と戦勝国の米国が恩讐(おんしゅう)とお互いの相克を乗り越えて、協力してこの疫病に対峙(たいじ)していくことが世界を救うと信じ、前進していきたい。

 

(JAPAN Forward編集部)

 

 

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※「日本を発信」シリーズは、産経新聞のオピニオン面に掲載された記事を転載しています

 

 

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