
衆院予算委員会第三分科会で質問する塩崎彰久氏=27日午後(「衆院インターネット審議中継」から)
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埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人の一部と住民の軋轢が表面化している問題で、難民認定制度の悪用を防ぐため、現在は免除されている短期滞在の査証(ビザ)取得を推奨する措置の導入論が急浮上している。トルコ国籍者のビザ免除停止論が根強い中で中間に当たる措置だ。2月末に国会で初めて論議され、政府側は「慎重に考慮する」と答弁した。
過去にイランなど免除停止
この措置は「ビザ取得勧奨措置」と呼ばれ、本来は短期滞在(90日)のビザ免除対象者に対し、本国で前もってビザの取得を推奨するもの。外務省は「事前にビザを取得しない場合、日本入国時に厳格な入国審査が行われ、結果として入国できないおそれがある」(外国人課)と説明する。
トルコ国籍者のビザ免除をめぐっては、航空券代さえ負担できれば、パスポート一つで来日して難民申請できることになる。審査中は数年単位で在留を継続できるため、就労目的のクルド人が増える温床になっているという。令和5年の難民申請者数上位10カ国のうち、ビザ免除国はトルコだけだ。
このため、トルコに対するビザ免除を一時停止すべきとの世論が起きていた。これまでにビザ免除が停止されたのは、平成元年のバングラデシュとパキスタン、4年のイランの3カ国。いずれも就労目的の不法滞在者が問題化したためで、免除停止の結果、不法滞在者は激減した。
ペルーは勧奨措置を解除へ
2月27日の衆院予算委員会分科会では、自民党の塩崎彰久氏が「過去にはビザ免除停止まではいかなくても、問題があるときに、ビザ取得勧奨措置を外務省が導入したことがある」と指摘。トルコに対する措置の導入を提起した。
法務省は現在、ビザ免除対象者の入国の可否を渡航前に審査する電子渡航認証制度「JESTA(ジェスタ)」を令和12年までに導入する準備を進めており、塩崎氏は「ジェスタ導入までの5年間の時限措置として検討してはどうか」とただした。
答弁した松本尚外務政務官は、ビザ免除停止については「両国の友好関係に寄与するもので、現時点で直ちに停止の必要があるとは考えていない」と従来の政府答弁を維持。一方で、勧奨措置については「導入の意義や効果をトルコとも相談しながら、慎重に考慮する必要がある」と述べ、政府として初めて措置の検討について言及した。

外務省によると、短期滞在ビザの免除国は約70カ国で、勧奨措置は南米のペルー(平成7年から)とコロンビア(16年から)の2カ国で導入されている。ペルーについては昨年11月の首脳会談で、同国側が強制送還への協力を約束するなどしたため措置の解除が発表され、数カ月内に元のビザ免除へ戻す手続きが進んでいる。
入管関係者は「就労目的の外国人がパスポート一つで簡単に来日できる現状が変わらない限り、問題は解決しない。勧奨措置の導入だけでも、厳格に運用することでかなり就労目的の抑止になるだろう」と話している。
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2025年3月2日付産経新聞【「移民」と日本人】を転載しています
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