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また韓国の裁判所がひどい判決を下した。1月8日、ソウル地裁は日本国に対して、元慰安婦12人に、1人あたり1億ウォン(約950万円)の慰謝料を払えと命じた。

 

国際法には、国家は他国の裁判の被告にならないという「主権免除」の原則がある。国家が互いの主権を尊重する外交関係の基本だ。ところがソウル地裁は、慰安婦制度を「主権免除」が適用されない「反人道的犯罪」であると決め付けた。

 

 

歴史認識に二重の間違い

 

判決は慰安婦制度について、「日本帝国によって計画的、組織的に広範囲に実行された反人道的犯罪行為で、国際規範に違反したものであり、当時日本帝国によって不法占領中であった韓半島内でわが国民である原告たちに対して強行された」と主張した。この決め付けは二重の意味で間違っており、受け入れ難い。

 

第一に、慰安婦制度は当時合法だった公娼制度の一環だ。そのことは、韓国の学者も最近、多くの史料に基づき学術的に証明している。第二に、日本の朝鮮統治は当時の国際法の枠の中で行われた合法的なものであって「不法占領」ではない。

 

だが、この二つの歴史認識の間違いは両方とも日本発なのだ。1990年代初め、朝日新聞と弁護士の高木健一氏らに代表される日本国内の反日勢力が、「挺身隊」という労働動員の公的制度が朝鮮人慰安婦募集に使われたというウソをまき散らし、韓国で原告を集めて日本で裁判を起こした。「慰安婦は強制連行された性奴隷で、その数は20万人」というデマがそのころ拡散した。

 

また、1980年代から和田春樹氏(現東大名誉教授)ら反日学者が日本の朝鮮統治は不法だったという理屈を考え出して、それを日本政府に認めさせるための運動をしつこく続け、その論理が韓国に飛び火した。

 

だから、今回の判決を批判するためには、主権免除という国際法の原則を語るだけでは不十分で、日本発の二つのウソに対する反論をしなければならない。外務省は2018年、日本語と英語でホームページに「強制連行、性奴隷、20万人」説への反論を掲載し、昨年11月には韓国語版も追加した。

 

 

貧弱な慰安婦研究と発信

 

ただ、広報を支える研究活動があまりにも弱体だ。文部科学省の予算で賄われる科学研究費(科研費)を使った慰安婦問題の研究はこれまでに47件あったが、「強制連行、性奴隷、20万人」説の間違いを指摘する研究は皆無だ。外務省の外郭団体である日本国際問題研究所は2017年に歴史認識問題などの研究と国際発信のために領土・歴史センターを設置したが、同センターでは慰安婦問題に関する研究や発信を行っていない。

 

筆者は有志学者らと共に2016年9月、日本国と先人の名誉を守る研究と広報をすることを目的に歴史認識問題研究会という小さな組織を作って活動してきた。韓国でも歴史の真実を研究し反日派と闘う勇気のある良識派が登場してきた。今こそ慰安婦制度の実態に関する国際広報をより強化するための体制作りに皆で知恵を絞るべき時だ。

 

筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第754回(2021年1月12日)を転載しています

 

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