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小型ロケット「カイロス」、国内ベンチャー初の人工衛星打ち上げへ 目指す手軽な「宇宙宅配便」

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スペースワンが計画するロケットのイメージ(同社提供)

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[3月9日更新]和歌山県串本町のロケット発射場「スペースポート紀伊」から3月9日に予定していた小型固体燃料ロケット「カイロス」初号機打ち上げが延期された。宇宙事業会社「スペースワン」(東京都港区)は同日、設定していた警戒海域に船舶が残留していたことが原因だと発表した。ロケットに異常はないという。次の打ち上げ期日は13日以降としている。

 

 

和歌山県串本町に整備された日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」から3月9日、小型固体燃料ロケット「カイロス」初号機が打ち上げられる。宇宙事業会社「スペースワン」(東京都港区)が運営し、国内ベンチャーによる人工衛星打ち上げは初の挑戦。将来的には年間20回の打ち上げを実現して宇宙輸送の一翼を担うことが期待され、地元も熱い視線を送っている。

 

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固体燃料で準備期間短縮

 

「宇宙宅配便」をコンセプトに開発されたカイロスロケットの強みは、手軽さにある。

 

全長は国内主力ロケット「H2A」の約3分の1にあたる18メートル、重さも23トンと軽量。固体燃料を使うことで発射までの準備期間を短縮し、衛星の受け渡しから4日での発射を可能にした。

 

ほかにも、管制手順を自動化し、異常発生時の破壊指令もロケット本体が自動で行うことで打ち上げの省人化を実現。今回の打ち上げもわずか十数人のスタッフで遂行される予定だ。

 

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2020年代中に年間20回を打ち上げ、最終的に世界最高頻度の宇宙輸送サービスを目指す。豊田正和社長は「日本では使いやすいロケットが不足し、打ち上げ機会が限られていた。カイロスが使い勝手の良いインフラになれば」と話す。

 

 

国際競争力強化に不可欠

 

今回のロケットは内閣衛星情報センターの「短期打上型小型衛星」を搭載。政府の情報収集衛星を小型衛星で代替できるかを検証する実証実験が行われる予定だ。

 

政府もスペースワンの挑戦に熱い視線を送っている。今後の宇宙開発を持続的な経済成長の起爆剤にするため、「民間の力」が必要不可欠だとみているからだ。

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昨年6月、今後の方向性を定めた宇宙基本計画を閣議決定。さらに今年度内に、衛星や宇宙への輸送、探査などの技術開発について、民間支援の道筋を記す「宇宙技術戦略」を策定する。

 

「次世代の宇宙輸送は2030年代前半に基幹ロケットを、民間も含め30機程度を確保する。国がしっかり支援し、民間の投資を呼び込んだ上で、国際競争力を確保していく方針だ」

 

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の風木淳事務局長は今年2月、日本の次世代主力ロケット「H3」の打ち上げ後の会見で、そう説明した。

 

同事務局によると、打ち上げ需要は、人工衛星を使った商業サービスの増加などで増えており、昨年の世界のロケット打ち上げ数は過去最大の212回となった。国別で最も多いのが米国の108回。このうちスペースX社が96回を占める。

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一方、日本はわずか2回と大きく出遅れている。これを5~10年後には現状の15倍にする計画で、達成するには民間企業による打ち上げが欠かせない。

 

日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」=2月26日、和歌山県串本町(共同通信社ヘリから)

 

チケット完売、地元も盛り上がり

 

当日は、特設サイトでライブ中継されるほか、発射場のある串本町と隣接する和歌山県那智勝浦町に1カ所ずつ、打ち上がったロケットを近くでみられる見学場(有料、事前予約のみ)を設置。また、同県内や東京都内などに10カ所以上のパブリックビューング会場が設けられる。

 

見学場のチケット(5千人分)は特設サイトで1月29日午後1時に発売されたが、2日後の31日午後に売り切れた。キャンセル分を2月26日に販売したところ、これもその日のうちに完売。那智勝浦観光機構が企画した1泊2日の見学ツアーも数日で定員に達したという。

 

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両町の主な宿泊施設には予約が殺到。那智勝浦町のあるホテルでは、打ち上げ日程が発表された1月下旬から予約が増え、すでに前日と当日は満室という。

 

発射地点の南や東に陸地がないなどの条件で令和4年に発射場が完成した串本町では観光需要に期待が高まる一方、周辺の道路は渋滞が予想され、当日の町営バスと観光周遊バスを全便運休とするほか、ごみ収集を中止するなどして対応する。田嶋勝正町長は「ロケットの意義は観光振興だけではない。地元の子供たちにとって、ロケットの技術を間近に見られるのは人生観に影響を与える大きなものだ」と期待を寄せた。

 

筆者:花輪理徳、張英壽、大谷卓(産経新聞)

 

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