日本の対韓引きこもりに終止符を

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韓国が日本の「フクシマ原発事故」がらみの放射能問題に異様なほど関心を示しているのは、必ずしも反日感情からだけではない。近年、ニューファミリーの若い世代を中心に、食品の安全性をはじめ環境汚染、生活汚染への不安や心配、そして健康問題への関心が非常に強くなっているからだ。

 

たとえば先ごろ、生活必需品である国産のベッドの素材から放射性のラドンが検出されたといって大騒ぎになり、廃棄処分を余儀なくされた何万台ものベッドが野ざらしになっている写真は今も印象に残っている。

 

それでも相手が日本となるとやはり「日本ケシカラン」という反日ムードがにじみ出る。とくに「フクシマがらみ」となると、まるで日本の“弱点”をつかんだかのような雰囲気で日本非難の声を上げる。東京オリンピックに関連し、市民団体やマスコミが福島での野球競技開催や選手村の食堂での福島産食材をネタに、「放射能オリンピック」であるかのような“風評”を広げてきたのはその一例だ。

 

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直近では事故原発の処理水の海洋放出計画に対する反発がそうだ。海流の流れに乗って韓国に放射能被害が及ぶといって、市民団体やマスコミはもちろん政府まで外交問題として日本に問題提起している。背景には急進的な国際環境団体グリーンピースの韓国での“扇動”もあるが、国際的には韓国だけが日本を非難しているかたちだ。

 

そこで日本は韓国に対する反論、説得に乗り出し、在ソウル日本大使館は先ごろ、韓国マスコミを対象に記者会見を開いた。

 

その結果、一部メディアでは「汚染水放流強行を示唆」などと悪意の見出しも見られたが、多くは「韓国だけが反対」と報じ、日本の計画は国際社会の理解を得ているという日本政府の立場と事実が、いわば初めて(?)韓国世論に伝わる機会となった。これは日本大使館の久しぶり、いや初めてのヒットである。

 

日本政府は安倍前政権下で日本の政策や立場を国際社会に広く伝える「対外発信力」強化に努力してきたが、韓国に対しては昔からあらゆる案件で「反日感情を刺激してはいけない」などといって腰が引けてきた。

 

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たとえば2005年、当時の高野紀元大使がソウル外信記者クラブの昼食会見で質問に答え、「竹島は日本の固有の領土」という日本政府の従来の公式立場を述べたときのことが思い出される。韓国では官民挙げて「日本大使がソウルのど真ん中で妄言」などといって反日運動が盛り上がったのだが、日本大使館は反論どころか「これからは表向き領有権を具体的には言及しない」と萎縮してしまった。

 

日韓間には竹島問題のほか教科書、慰安婦、徴用工、ユネスコ世界遺産、日本海名称、旭日旗…多くの問題があるが、日本が韓国現地で世論向けに事実関係をはじめ日本の立場を積極的に発信したことはほとんどなかった。

 

こういうのを公共外交というのだろうか、日本は臆することなくメディアをはじめ韓国世論に直接アピールしていいのだ。日本の対韓引きこもりは終わりにしたい。

 

筆者:黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)

 

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2020年11月29日付産経新聞【から(韓)くに便り】を転載しています

 

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