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「奪われる尖閣」同盟国の警告

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「日本が実質のある対抗措置を敏速にとって押し返さなければ、中国は必ず尖閣諸島(沖縄県石垣市)の日本の主権の奪取をさらに進めてくる」

 

米国の中国海洋戦略研究の権威、トシ・ヨシハラ氏が中国の最近の海警法施行についてこんな警告を発した。

 

ヨシハラ氏といえば海軍大学校の教授を長年務め、いまはワシントンの安全保障研究の大手機関「戦略予算評価センター」(CSBA)の上級研究員である。中国に精通した日系米人学者としてとくに中国の海洋戦略研究では全米でも第一人者との定評がある。

 

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尖閣問題についても同氏は、中国側の戦略目標を単に領土の軍事拡張だけでなく、東シナ海の制覇から米軍の行動の封じ込めと特徴づけてきた。昨年は尖閣に関する一連の研究報告書で、中国海軍の戦力が日本の海上自衛隊を大幅に上回った結果、中国側では尖閣の軍事奪取も米軍の介入を阻んだまま達成できるという思考が強くなったことを指摘していた。

 

ヨシハラ氏はその報告で、中国軍が尖閣諸島を4日足らずで完全に軍事占拠できるという具体的な作戦案を中国側の軍事専門家2人が公表したことも伝えていた。そうした研究実績を有する彼に中国の今回の海警法施行について見解を問うてみた。尖閣の究極の防衛を米国に依存する日本にとって米側の対応は致命的な比重を持つからだ。

 

ヨシハラ氏は以下の骨子を語った。「国内法を使って対外的な領土の主張の拡大を進めることは中国の常套(じょうとう)手段だといえる。南シナ海全域の島嶼(とうしょ)や尖閣諸島の領有権を一方的に主張した1992年の領海法、台湾への武力行使とその領土奪取を正当化した2005年の反国家分裂法はその代表例だ」

 

「その一方、国際政治では国家の主権と武力行使の権利は緊密に結ばれている。中国が自国の主権内とみなす領域の防衛に武力を使うと宣言すること自体はその現実に合っている。ただし今回の措置は日本が年来、主張してきた尖閣諸島の主権を侵害して、その一部を削り取るサラミ作戦だといえる」

 

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「中国は海警法施行により情勢を決定的に変えうるレッドラインを露骨に越えることなしに日本の立場を突き崩す措置をとった。その措置には尖閣情勢全体を不安定にする危険もあるわけだが、中国はそのリスクを計算の上でこの行動に出たのだ」

 

「もし日本が遺憾や懸念を表明するだけで、押し返しのための実質的な行動をなにもとらなければ、中国は尖閣の日本の主権を奪うための次のサラミ作戦を必ずとってくる。国家主権のためのリスクをとるという点で中国が日本より強い意欲を有する限り、日本はこの争いで負けていくだろう。それを防ぐには日本もリスクを冒す意欲を誇示せねばならない」

 

なんとも深刻な警告である。尖閣諸島の施政権は明白に日本側が保ち、その防衛には自国も出動すると言明している同盟国における超党派の専門家の見解なのだ。そのヨシハラ氏は中国の尖閣への攻勢が軍事を中心としながらも行政、法律、外交、情報、メディアなどの総合要素を含んでの日本に対する闘争だとも強調したのだった。

 

筆者:古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

 

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2021年2月8日付産経新聞【あめりかノート】を転載しています

 

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