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自衛隊装備、ODAでフィリピンに初供与 対中包囲の協力強化

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災害時の人命救助に必要な資機材がまとめられた自衛隊の人命救助システムを、政府がフィリピン軍に政府開発援助(ODA)で供与を始めたことが4月18日、分かった。ODAの基本方針を定めた平成27年策定の開発協力大綱で非軍事目的の他国軍支援は可能と明確化して以降、自衛隊の運用装備をODAで供与する初の事例となる。

 

人命救助システムは、災害発生後72時間以内に人命を救うために必要な、エンジンカッターや投光器、ジャッキといった資機材をひとまとめにしたもの。捜索、救助から負傷者の搬送まで完結した機能を備え、コンテナに収めてヘリコプターや車両で輸送できる。

 

平成7年の阪神大震災の教訓から導入。陸自駐屯地などに配置され、東日本大震災をはじめとする災害派遣時に投入されてきた。

 

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比軍にはシステムの装備のうち音響・破壊構造物内探査機や削岩機、救命ボートなどで構成する4セット(約1億2千万円相当)を最初に供与する。今年2月から輸送船で運び、3月に比軍基地へ搬入を始めた。今後、引き渡し式を行う。

 

比軍が効率的にシステムを運用できるよう、陸自が中心になり、ノウハウを教える「能力構築支援」も実施する。

 

昨年8月には比軍に日本製防空レーダーを輸出する契約も成立した。平成26年の防衛装備移転三原則の策定により装備輸出に道を開いて以降、国産装備の初の完成品輸出となる。

 

ODAでの自衛隊装備の供与と、能力構築支援、防衛装備移転がそろったことで、対中国包囲網を構築する上で欠かせないフィリピンとの安全保障協力体制が整った。菅義偉首相はゴールデンウイークにフィリピンを訪問し、ドゥテルテ大統領と安保協力の強化などを協議する。

 

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対中の要衝、フィリピン

 

フィリピンは南シナ海での中国の威圧的な動向に反発を強めており、対中包囲網構築のモデルケースとなり得る。ODAと防衛装備移転に加え、他国軍の能力を高める能力構築支援は中国の「力による現状変更」を押し返す方策として期待される。

 

「ODA、能力構築、防衛装備協力など支援メニューを組み合わせ、ASEAN(東南アジア諸国連合)を支援していく」。平成26年5月、シンガポールでのアジア安保会議で当時の安倍晋三首相が掲げた支援メニューが3点セットだ。

 

翌27年、旧ODA大綱の名称を変更して開発協力大綱を策定。旧大綱のもとでタブー視されていたODAでの他国軍支援について、「民生目的、災害救助など非軍事目的の開発協力」には支援を行えるという目的と原則を明示した。

 

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先行して24年度に始めた能力構築支援は東南アジアを中心に15カ国に上り、比軍には26年度から一昨年度まで毎年度、幅広い分野で実施している。今年3月には初めてパプアニューギニア軍の人道支援・災害救援能力の向上でオンライン教育を行い、3年計画で建設機械整備の技能を高める。

 

フィリピンとパプアニューギニアは日米にとって対中の要衝だ。中国は台湾海峡などでの有事の際、九州-台湾-フィリピンを結ぶ第1列島線の西側を支配下に置き、小笠原諸島-グアム-パプアニューギニアを結ぶ第2列島線より西側に米軍の空母を近づけないことを想定しているためだ。

 

政府高官は「経済支援を目当てにフィリピンやパプアニューギニアが中国になびき、中国の軍事拠点を構築させることは阻止する」と指摘。そのための主要な方策が能力構築支援だ。

 

自衛隊幹部は日本の能力構築支援の原則を「相手のニーズに沿い、丁寧に、息長く」と指摘し、さらなる拡大と深化を目指す。

 

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ODAと装備移転でモノを渡せば使い方や整備の教育が欠かせず、おのずと能力構築支援の機会が拡大する。比軍に輸出するレーダーのような警戒監視装備は能力構築支援を通じて情報共有をできる関係に深化させられる可能性を高め、情報共有が実現すれば日本と台湾の防衛にも資する。

 

インドネシアには海洋に関する国際法の講義も行っている。これは東・南シナ海での中国の独善的な振る舞いに異を唱えるルールと価値観の共有につながる。

 

一方、中国の能力構築支援はどうか。防衛省のシンクタンク「防衛研究所」米欧ロシア研究室の飯田将史室長は平成27年に報告をまとめ、病院船による医療支援などの例を挙げ、「中国軍の国際的な評価向上が目標」「支援を受ける国の能力向上は成果を生んでいない」と結論づけている。

 

中国は現状では能力構築支援を重視していない。東南アジア諸国と共同演習などで表面的に友好関係を維持しつつ、「南シナ海の実効支配を強め、実を取ろうとしている」(飯田氏)。

 

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中国の姿勢と対比すると、日本の3点セットに秘められた深謀遠慮が鮮明になる。

 

筆者:半沢尚久(産経新聞)

 

 

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