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再生1700万回超「世界一美しい形」空手元女王が五輪強化

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東京五輪で初めて正式競技に採用された「空手」。形と組手8種目すべてでメダル獲得を目標に掲げる全日本空手道連盟の選手強化委員長に5月、女子形の元世界王者、宇佐美里香(りか)さん(35)=五段=が就任した。「世界一美しい形」と称賛され、9年前の世界選手権決勝の演武は動画投稿サイト「YouTube」で再生回数1700万回を超える。前任者が竹刀で選手を負傷させて解任されたことから急遽(きゅうきょ)白羽の矢が立った元女王は「空手発祥の地として日本が負けるわけにはいかない。(世界一の)経験を生かす」と気迫をみなぎらせた。

 

 

夫に背中を押され

 

「身の引き締まる思い。選手たちのためによい環境を築き、役目を果たせるよう頑張る」

 

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平成27年から鳥取県スポーツ協会で特任体育指導員を務める宇佐美さんは、委員長就任を同県の平井伸治知事に報告し、こう決意を語った。就任要請は突然で数日間迷ったが、6年前に結婚した同い年の夫が「しっかりサポートするから安心して役目を果たして」と背中を押してくれた。

 

3歳の一人息子は、保育園の迎えなどで夫の母親に面倒を見てもらうこともある。これからは全国各地で行われる拠点合宿に飛び回り、鳥取の自宅で過ごせるのは3日に1日ほどの割合となる。

 

平井知事は「世界一となり、東京五輪のKARATEアンバサダーもされ、めぐりめぐって強化委員長就任は宿命だったような気もする。素晴らしい成果を上げてほしい。県庁をあげて応援する」と激励した。

 

 

「里香は世界一になれる」

 

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東京で生まれ育った宇佐美さんが鳥取で暮らすことになったのは、大学1年時の師匠との出会いがきっかけだった。

 

空手を始めたのは小学5年、10歳のとき。テレビで見たアクションドラマで興味をもった。強豪の帝京高校に進み、3年時にはインターハイの形で優勝。「精神的に強くなりたい」と、練習の厳しさで知られる国士舘大学に進学し、入学1カ月で空手部コーチが紹介してくれたのが井上慶身(よしみ)氏(井上派糸東(しとう)流慶心会宗主、平成27年に死去)だった。

 

「里香は世界一になれる。鳥取に稽古に来い」

 

そう誘われ、井上氏が道場を開く鳥取市まで毎月行き、毎回1週間程度滞在して練習に打ち込んだ。「最初は指導のレベルが高すぎて井上先生が何を言っているか分からなかった」が、大学2年になると「スポンジに水が染み込むように井上先生の教えを理解、吸収できるようになった」。

 

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この縁で、大学卒業時には鳥取で就職することになり、県教育委員会に勤めながら井上氏の道場に通った。3年後、満を持して世界選手権に出場。しかし、結果は3位に終わった。

 

「気迫が足りなかった。空手は心技体。その中でも心が一番大事。気迫がのってないから形が死んでいた」

 

負ける悔しさを知り、再び練習に打ち込んだ。「午前10時から午後10時まで半日練習し、『突き』ばかり5時間やり続けたこともある。完璧を目指した。自分で言うのも変だが、このころは殺気立っていたと思う」。2年後の2012(平成24)年にフランスで開催された世界選手権。絶対に負けたくないという気持ちで臨んだ。

 

対戦形式で行われた決勝、強さと美しさを兼ね備えた宇佐美さんの演武は、審判の判定で5対0で相手を下す完勝だった。世界空手連盟がYouTubeにアップしたその動画は、世界で計1740万回以上(5月末現在)再生され、今も視聴され続けている。

 

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宇佐美さんは「外国選手は体が大きくパワーにあふれている。対して自分は見た目、体は細い。しかし、体の軸は太く、スピードと合わせて『極(き)め』を強調する。気合や道着が擦れ合い発する音、見た目も大事だ。タカラヅカを意識した髪形で凜(りん)とした感じ、カッコよさをだした」と決勝の演武を分析した。

 

 

選手の心をサポート

 

空手の愛好者は世界194カ国・地域で約1億3千万人。その頂点に立ち、翌年、現役を引退した。指導者を目指して国士舘大学大学院に進み、修了後には再び鳥取県に戻って現在の仕事に就いた。特任体育指導員として、各種スポーツの競技力向上を業務とするほか、企業や団体に招かれて演武を披露するなどして、空手の普及に努めている。

 

「大きな人生の分かれ道が何度かあったが、人とのめぐりあいや助けをうけて決断してきた」

 

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鳥取は修業の場で、ずっと暮らす場所とは思っていなかったが、今では「県外から鳥取に戻るとホッとする」。しかし、その安堵(あんど)もつかの間、選手強化委員長就任で、また新たな人生のステージに立つことになった。

 

「選手時代、先生や先輩に『自信をもっていい』と言ってもらい、支えられた。言葉の大切さは身をもって分かっている。選手がどうしたら本番で力を出せるか、サポートしたい。年齢は選手に近いし、自分の経験と照らし合わせながら選手に寄り添う」

 

開幕まで2カ月を切った東京五輪。目標に向けて迷いはない。

 

筆者:松田則章(産経新聞)

 

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