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芥川賞は石沢、李両氏 直木賞は佐藤、澤田両氏

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(右から)李琴峰さん、佐藤究さん、澤田瞳子さん

 

第165回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が14日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は石沢麻依さん(41)の「貝に続く場所にて」(群像6月号)と李琴峰(り・ことみ)さん(31)の「彼岸花(ひがんばな)が咲く島」(文学界3月号)に、直木賞は佐藤究(きわむ)さん(43)の「テスカトリポカ」(KADOKAWA)と、澤田瞳子(とうこ)さん(43)の「星落ちて、なお」(文芸春秋)に決まった。

 

李さんは台湾出身で、日本語を母語としない作家の芥川賞受賞は平成20年、中国人の楊逸(ヤン・イー)さん以来2人目。佐藤さんは同作で大衆文学に与えられる権威ある賞の山本周五郎賞(5月)も受けており、16年の熊谷達也さん以来17年ぶり2人目となる同一作品での両賞受賞を果たした。

 

芥川賞の石沢さんは昭和55年、宮城県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻はドイツルネサンス美術で、2013年から2度、ドイツに留学。現在、現地の大学院博士課程に在籍中。ドイツ・イエナ市在住。今春、「貝に続く場所にて」で群像新人文学賞受賞。受賞作は東日本大震災で津波にのまれて行方不明になった知人の「幽霊」との再会を通じ、震災の記憶との向き合い方を問う鎮魂の物語。記憶との距離と時間を埋めるように放つ丹念な言葉の数々に圧倒される。

 

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李さんは1989年、台湾生まれ。2013年に来日。早稲田大大学院修士課程修了。17年に「独舞」(単行本は「独り舞」)が群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。芥川賞候補になるのは2回目。

 

受賞作は記憶をなくした少女が流れ着いた島で、男女が<ニホン語>と<女語>という異なる言葉を使い、<ノロ>と呼ばれる女性たちが統治していた。やがて島のなりたちを知る少女らの葛藤と成長を描く。

 

芥川賞選考委員の松浦寿輝さんは石沢作品について「独創的なアプローチで震災に向かい合っている。小説にしかできない世界を作り出そうとしている」。李作品については「現代日本語とは違う3つの言語が衝突したり、共鳴したりする言語空間を作り上げた。その野心的な冒険性が評価された」と語った。

 

直木賞の佐藤さんは昭和52年、福岡県生まれ。福岡大付属大濠高校卒。平成16年に純文学作品でデビューし、28年に江戸川乱歩賞を受けた「QJKJQ」でエンターテインメントに転向。30年に「Ank:a mirroring ape」で大藪春彦賞と吉川英治文学新人賞を受けた。

 

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受賞作はメキシコ北東部やジャカルタ、川崎を主な舞台に、国際的な麻薬抗争と違法な臓器密売ビジネスを描いた犯罪群像劇。古代アステカの神話も絡めながら、弱肉強食である現代の資本主義社会の暗黒面を浮かび上がらせる。

 

澤田さんは昭和52年、京都市生まれ。同志社大学大学院博士課程前期修了。平成22年、「孤鷹の天」でデビュー。「満つる月の如し 仏師・定朝」で第32回新田次郎文学賞。直木賞候補は5度目。

 

受賞作は天才絵師、河鍋暁斎(きょうさい)を父に持ち、同じ道を歩む娘とよ(暁翠=きょうすい)の一代記。偉大な父の死、超えられないその壁、絵師の兄との確執を経験しながら、懸命に生きた女性絵師の波乱の人生を描く。

 

直木賞の林真理子選考委員は佐藤作品については「残虐な暴力シーンをめぐり激論があったが、スケールが大きく、ある意味で希望の物語でもある」。澤田作品は「熟練の方であり、エンターテインメントの技量を見せた」とたたえた。

 

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贈呈式は8月下旬、都内で開かれる。賞金は各100万円。

 

李琴峰さん

 

架空の3言語 不思議な世界

 

今回で2度目のノミネートとなる台湾出身の李琴峰(り・ことみ)さん(31)が、多くの歴史的作家を輩出してきた芥川賞を射止めた。受賞会見で今の気持ちを聞かれると、「一番感謝しないといけないのは、これまで李琴峰作品を読んで応援してくれた読者の皆さん」と謝意を述べた。

 

日本語以外を母国語とする作家が獲得したのは、平成20年の楊逸(ヤンイー)さん以来で2人目となる。尊敬する楊逸さんに続く受賞を「本当に光栄に思う」と喜ぶ。

 

受賞作の「彼岸花の咲く島」では、<ニホン語>と<女語>、<ひのもとことば>という架空の3つの言語が使われる。さまざまな言語に接してきたからこそ表現できる不思議な世界が展開される。

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日本語を学び始めたのは中学2年のころ。25年に日本に留学して就職。その後、小説を書き始め、29年に群像新人文学賞優秀作となった「独舞」(単行本は「独り舞」に改題)でデビュー。セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)をテーマに、小説を書き続けてきた。

 

生まれつき習得したわけではない日本語で作品を発表し続けている。その理由を「日本に住んでいて、日本語で日々の生活をしている。だから、日本語で書くのはある種、大変だけれど自然なことになっている」と語る。

 

過去の作品では、多様な性的アイデンティティーを持つ女性が登場したり、ウイグルの問題を取り上げたりしてきた。「作品一作ごとに、日本文学というものを確実的にアップデートしているという自負がある」と話す。

 

歴史的な受賞者となるだけに、今後の活躍に大きな期待がかけられている。記者会見では、日本文学史でどんな役割を担っていくつもりなのかという質問に対し、「それを理解して整理し、分類するのは評論家、研究者の仕事と思う」と話し、こう言い切った。「自分が大事だと思っている問題意識を小説の中に取り込んで、そして自分が書きたいものを書いていく。それに尽きるかなと思う」

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筆者:森本昌彦(産経新聞)

 

 

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