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東京の空に謎の「顔」浮かぶ アートプロジェクト「まさゆめ」

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東京五輪開幕まであと1週間となった16日朝、国立代々木競技場に程近い東京の空に、巨大な「顔」が浮かんだ。これは誰? 何のために? 謎が謎を呼ぶ、白昼夢のような光景。実は、現代アートのプロジェクトなのだ。

 

 

少女の夢から始まった

 

「まさゆめ」と題されたこのプロジェクトは、世界中から広く顔を募集し、「実在する1人の顔」を選んで東京の空に浮かべるというもの。実際に午前6時、6階建てビル相当(約20メートル)の巨大なバルーンのような顔が浮揚した。

 

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企画したのは美術家の荒神明香(こうじん・はるか)さん、ディレクターの南川憲二さん、インストーラー(制作・設置担当)の増井宏文さんによる現代アートチーム、目[mé]。東京都などが主催する公募文化事業「Tokyo Tokyo Festival スペシャル13」の一つとして昨年実施予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため1年延期されていた。

 

着想源は、荒神さんが14歳のときに見た「まるでお月さまのように人間の顔が空にぽっと浮かんでいる夢」だという。どんな顔かは思い出せないそうだが、「幻想的というより人工的な風景で、大人たちが街ぐるみで仕掛けたものだと(夢の中で)直感した。こんな突拍子もないことをやっていいんだと勇気をもらった」と振り返る。いわばアーティスト個人の夢に始まり、空に揚がるのもまた、世界のどこかにいる個人の顔。それを空や雲と同じ景色として提示したとき、「公」はどう反応するのか。オリンピックイヤーという年に、個と公の関係を問う美術作品として計画された。

 

 

見方を変える大切さ

 

<2020年東京の空に浮かぶ顔、募集->

 

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2年前、こんな不思議な呼びかけに、世界中から千人を超える老若男女が応じた。どんな顔が浮かぶべきかを専門家や一般参加者が話し合う「顔会議」なども開催され、最終的に荒神さんがたった一人の顔を選んだ。顔会議の中で意見として出た、不特定多数の視線を「はね返す顔」というキーワードが大いに参考になったという。

 

「本当に、この人しかいないと思った。〝哲学の顔〟と名付けてしまうくらい、自分たちの存在について考えさせてくれるお顔です」と荒神さん。それが誰なのかは明かされない。顔がカラーだと広告のように映ることから、あえてモノクロにした。

 

コロナ禍という想定外の事態に、プロジェクトの是非や意義を3人で問い直したという。南川さんは、生存を脅かされるほど厳しい状況において「ものの見方を変える大切さ」について考えた。2010年にチリで鉱山落盤事故が発生し、作業員33人が69日間も地下深く閉じ込められたとき、それぞれが牧師や医師や記者などになりきって「小さな社会」を作り、想像力も駆使して乗り越えたという実話を思い出したと語る。「視点を変えること、時に常識とされるものを逸脱する大切さを『まさゆめ』を通して感じてもらえたら」

 

3年の準備を経て、夢が「まさゆめ」になった荒神さんは、しみじみと語る。「本当に謎なことが起こっている。大変な状況の中でできたことは奇跡。あらゆる意味や合理性をはぎ取った、謎の一瞬に賭けて、顔を応募してくださった人や関係者ら皆が動いたんだと。SNSなどを通じて多くの方に見てもらい、このプロジェクトが新たな謎や想像力につながっていけばいいなと思います」

 

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密を避けるため、顔が浮かぶ日時や場所は事前公表されないが、今夏に複数回、東京都心部で実施予定という。

 

筆者:黒沢綾子(産経新聞)

 

 

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