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「変異株にも効果」 新型コロナ治療の抗体医薬、開発加速

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新型コロナウイルスの治療薬開発が加速している。特に注目されているのが、ウイルスが増殖するのを防ぐ「中和抗体」を使った治療薬だ。遺伝子組み換え技術などを用いて人工的に作製し、患者に投与して重症化を抑える効果がある。海外では既に実用化されており、国内では、欧米の製薬企業が開発し、中外製薬が販売する抗体医薬「抗体カクテル療法」を、厚生労働省が月内にも承認する見通し。収束が見えない中で局面を変える「特効薬」としての期待も高まる。

 

中和抗体には、ウイルスが人の細胞に侵入するのを防ぐ働きがあり、軽症や中等症の患者に投与してウイルスの増殖を阻止し、重症化を防ぐ効果がある。

 

現在開発が進められている新型コロナ向け抗体医薬は、主に人工的に作製した中和抗体を用いる。感染から回復した人の血液から中和抗体を作る免疫細胞を選び、抗体の遺伝子を抽出。それをもとに抗体を作製するなど複数の開発手法がある。多くの段階を経る必要があるが、一度、高性能な人工抗体の「設計図」を得ることができれば大量生産が可能になる。

 

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海外では既に実用化されている。米食品医薬品局(FDA)は複数の抗体医薬の緊急使用を許可。スイス製薬大手ロシュと米製薬企業リジェネロン社が開発したカクテル療法は2種類の抗体を組み合わせる点滴薬で、治験中にトランプ前米大統領に特例で投与され話題になった。

 

日本では、ロシュと契約する中外製薬が、カクテル療法について6月末に厚労省に特例承認の適用を申請。今月19日に同省の部会で審議される。中外製薬によると、海外の治験では、患者の入院または死亡のリスクを7割程度減らす効果が確認された。

 

ワクチンでは国産開発の遅れが指摘されたが、抗体医薬も急ピッチで国内開発が進められている。

 

慶応大などのチームは田辺三菱製薬と共同研究し、人工抗体の実用化を目指す。このほか島根大や長崎大、広島大など多くの大学が人工抗体を開発し、創薬ベンチャーの「イーベック」(札幌市)が今年中の実用化を目指している。

 

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ウイルスの変異によって効果が薄れる懸念があるが、カクテル療法のように複数の抗体を混ぜて使えば効果の低減を抑えられる。変異はある程度予測できることから、島根大の浦野健教授(病態生化学)は「先回りして変異株に反応する抗体を複数作製して備えておく戦略も可能だ」と指摘する。

 

また富山大は、英国株やインド由来のデルタ株など、現状報告されている変異株のほとんどに効果がある「スーパー中和抗体」を開発した。研究チームは「今後現れる変異株にも十分効果があると考えられる」とする。

 

抗体医薬は、ワクチンが効きにくい人や、小児など接種の対象から外れた人の治療に役立つ。東京大の津本浩平教授(抗体工学)は「感染症は予防と治療の両方がそろって初めて安心できる。既存薬と、より高い効果を発揮する抗体医薬とをうまく組み合わせて治療していく方法が現実的だ」と指摘。その上で「日本の抗体医薬研究の個々の技術は非常にレベルが高い。国主導で良い薬を迅速に実用化させる体制づくりが必要だ」と話している。

 

筆者:有年由貴子(産経新聞)

 

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