
JAPAN Forwardとのインタビューに応じる孔柄淏氏
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昨年12月3日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳令を宣布して以来、韓国の政治論争の中心で、一度は忘れ去られかけていた疑問が再浮上してる。
物議を醸した尹大統領の決断の中心には、不正選挙疑惑の徹底調査を誓ったことがある。支持者らは長年にわたり、不正が選挙結果を歪め、保守陣営に不利に働いていると主張してきた。
そのため、戒厳令が発令された夜、約300人の戒厳軍が選挙管理委員会に派遣され、核心的証拠と見なされるコンピューターサーバーを検査することとなった。
多くの韓国国民は、依然としてこのような主張を陰謀論として否定しているが、世論は徐々に変化しつつある。現在では、国民の半数近くが選管に対する正式な調査を支持しており、同機関の汚職や縁故主義に対する監視も強化されている。
JAPAN Forwardの独占インタビューで、経済学者であり米ライス大学で博士号を取得した孔柄淏(ゴン・ビョンホ)氏が、不正選挙論争について詳細に語った。
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韓国における不正選挙疑惑の概要は?
韓国の不正選挙問題は根深いものだが、時間の関係上、特に論争の大きかった2020年4月15日と2024年4月20日の総選挙に焦点を当てる。 この二つの選挙で最も大きな論争となった核心的な問題は、2014年に導入された事前投票制度だった。
まず、2020年の総選挙から見てみよう。当時の選挙では、統計的に不可能な現象が発生した。代表的な例として、事前投票において、左派の共に民主党が保守の未来統合党よりも、全国すべての選挙区で一貫して高い得票率を記録した。共に民主党の事前投票得票率は当日投票に比べて12.5ポイント高かったのに対し、未来統合党は12.5ポイント低かった。つまり、全体の事前投票数のうち約25%の票が共に民主党に加算されたことになり、これは約222万票に相当する。
同じ現象が2024年の総選挙でも繰り返された。今回は、共に民主党の事前投票得票率が当日投票に比べて13ポイント高く、一方、保守系の国民の力は13ポイント低かった。このような数値は、外部の介入なしに自然界で起こることは困難だ。統計学的にはこれを統計的変則性と呼ぶ。このような異常現象が観測された場合、徹底した調査が必要だ。

事前投票と当日投票で、有権者の性質が異なる可能性は?
事前投票と当日投票は、例えるなら、同じ母親から生まれた2人の子供のようなものだ。両集団の傾向は本質的に類似しているはずだ。事前と当日投票の間には約4日間の間隔があるが、その短い期間中に有権者の構成そのものが完全に入れ替わることは現実的に不可能だ。
したがって、通常であれば、ある選挙区において、事前投票の比率は当日投票と全投票比率に類似しているはずだ。例えば、ある選挙区で候補者Aと候補者Bの合計得票率が6対4であった場合、事前投票と当日投票は、同様に6対4の分布を反映することになる。
しかし、2020年と2024年の総選挙では、大半の選挙区で、この予想されたパターンは当てはまらなかった。
不正はどのように行われたと思うか?
韓国の事前投票は、当日投票が行われる5日前の2日間にわたって行われる。事前投票が開始されると、各地域ごとに操作値Nが設定されます。これは、事前投票者一人当たり一枚の偽造投票を左派系の候補者に追加する方式だ。
例えば、操作値が3であれば、実際の投票3枚につき1枚の偽票が追加されることになる。この値は地域ごとに異なり、各選挙区で調整される。この段階での操作は、電算を通じて行われる。具体的には、外部から選管内部の電算網にアクセスし、数字を人為的に変更する方式だ。
では、はたして外部から選管の電算網に接続することは可能なのだろうか。韓国の国家情報院が2023年に実施した選管のサーバー検証結果を見ると、その可能性が浮上する。当時、国情院は仮想のハッカーを投入して選管の電算網の脆弱性を点検した。その結果、投票システム、開票システム、そして選管の内部網がハッキングに脆弱であるという事実が明らかになった。

操作値Nはどのように算出されたのか?
選挙が行われると、選管は各地域の候補者の得票数を公開する。一部の専門家が地域別の得票数を綿密に分析した結果、特定のパターンが存在することを発見した。これを逆探索することによって、操作値Nを算出したのです。
選管が発表したデータを分析し、そのデータを生成した特定の規則やパターンを見つける方法だ。つまり、公開された合成データを基に逆設計したことになる。選挙結果は本来、ランダム性を帯びているはずだが、得票数が特定のパターンに従っている場合、それ自体が人為的介入の証拠となる。
選挙不正を検証する最良の方法は?
まず、選管のサーバー全体に対する徹底的な検証が必要だ。2023年の国情院の調査では、サーバーのわずか5%だけをサンプリングして点検した。もし電算操作が行われたのであれば、サーバー内のログ記録やデータ操作の痕跡が残っているはずだ。

もう一つの方法は、事前投票者の名簿を公開し、これを実際の投票者と照合することだ。名簿に記録された一人一人に直接確認し、実際に投票したかどうかを検証すれば、操作の有無を明らかにすることができる。しかし、選管は個人情報保護などを理由に名簿の公開を拒否している。
不正選挙について主張したことで、反発を受けたことは?
私は長い間、不正選挙問題を研究し、その問題を提起してきた一人だ。この闘争の先頭に立った人々は、陰謀論者や極右勢力という汚名を着せられ、一部のマスコミ、国民、そして政治家から誹謗中傷されてきた。
最近、韓国で不正選挙問題を深く扱ったドキュメンタリーが放映され、私も少し出演した。このドキュメンタリーは大きな国民的関心を呼び起こし、YouTubeでもかなりの再生回数を記録した。しかし、放送後、私と妻に対する脅迫的な電話や嫌がらせがひどくなり、韓国では正常な生活を続けることが困難な状態になった。そのため、しばらく外国に滞在して状況を見守るしかない状況だ。
最後に伝えたいメッセージは?
選挙の公正さに異議を唱えることは、イデオロギーや党派性に関わる問題ではない。不正選挙の疑惑が無視され続ければ、特定の政治勢力が権力を長期にわたって握り続けることになる。
聞き手:吉田賢司(ジャーナリスト)
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