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コロナと五輪:迷走する東京五輪 「トンネルの先の光」何を照らすのか

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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年がたった福島県。復興のシンボルとされるJヴィレッジ(楢葉町、広野町)を3月25日、聖火リレーがスタートした。第1走者は震災が起きた平成23年のサッカー女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」のメンバーだった。

 

東京五輪の理念。それはリレーの出発地点が福島にされたように、当初は「復興五輪」だった。震災から立ち直った姿を世界に披露し、支援への返礼とする-。しかし、新型コロナウイルスは、それを揺るがした。「人類が新型コロナに打ち勝った証し」。感染拡大以降、そんな意味づけがされるようになった。

 

聖火リレーの出発式で、丸川珠代五輪相は「一人一人の思いがともしびに乗せられて重なることで、大会を迎える気持ちが国民の中で次第に盛り上がっていくのかと思う」と語った。

 

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だが、新型コロナは高まるはずの機運を削(そ)ぎ取っていく。

 

4月5日にリレーが行われた名古屋市では、一部区間で身動きが取れないほどの観衆が詰めかけ、「密」の状態となった。大阪府では公道での実施を全面的に中止し、万博記念公園(大阪府吹田市)に設けた周回コースを会場とした。

 

21日の松山市では「点火セレモニー」のみの実施となった。コロナ禍の中で始まった聖火リレーは、28日目でついに走行が取りやめられる事態となった。

 

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東京五輪をめぐる混乱はコロナ禍に始まったわけではない。平成27年には公式エンブレムがベルギーの劇場ロゴに似ていると指摘され、使用中止に。メイン会場の国立競技場の建設計画は迷走の末、白紙に戻された。

 

「世界一コンパクトな大会」を掲げていたが費用は膨張し、大会経費は総額1兆6440億円にも上る。五輪史上最も経費がかかる大会となる見込みだ。

 

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言も冷や水を浴びせかけた。「いかなる差別をも伴うことなく」と定めた五輪憲章にも反するとして、批判の的となった。

 

そしていま、東京五輪に対する世論の見方は厳しさを増している。4月の産経新聞社とFNNの合同世論調査では、東京五輪・パラリンピックの開催について「中止もやむを得ない」との回答は56・8%、「再延期せざるを得ない」との回答も17・6%で、悲観的な回答は7割を超えている。

 

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「五輪のもともとの目的は日本にスポーツ産業を根づかせるため。五輪招致以降、国内の市場規模は拡大しており、ある意味五輪開催の目標は達成している」と話すのはスポーツ文化評論家の玉木正之氏だ。

 

23年にはスポーツ界の悲願であるスポーツ基本法が成立し、27年にはスポーツ庁が発足。同庁によると、スポーツの市場規模を表す「スポーツGDP」は23年の約7兆円から29年には約8・4兆円規模まで成長している。

 

同庁はコロナ禍で落ち込む可能性があるとした上で、「令和元年まではスポーツ観光やスポーツイベントは大いに盛り上がった」と話す。

 

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玉木氏は「体育から一般のスポーツ、プロスポーツを文化として根づかせるという足場はできた。五輪はいわば最後の祭りのようなもの。コロナ禍の中で危険を冒してまで開く必要はない」と指摘する。

 

東京に発令されている3回目の緊急事態宣言。5月17日来日予定の国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、宣言について、こう発言した。

 

「大型連休に向けて、蔓延(まんえん)防止のために行う措置だと理解している。東京五輪とは関係がない」

 

開催への影響を否定しようとしたつもりが、結果的にコロナ禍の国民感情を逆なでしたかたちとなった。

 

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「トンネルの終わりの光となる」

 

新年のメッセージで、こう語っていたバッハ会長。その光は、灯(とも)るのか。灯ったとすれば、その光はどんな世界を照らし出すのか。

 

大会は7月23日に開幕することになっている。

 

 

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2021年5月5日付産経新聞【コロナと五輪の現在地】第5回(最終回)を転載しています

 

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